日々雑記 第6話

看護婦のないしょ話


私は昔大きな大学病院で3年間、看護婦をやってました。
高校から衛生看護科に通ったので20才で看護婦になりました。
ようするに、私の友人5割くらいは看護婦です。
その友人の1人、仮名Mさんから聞いた話です。

病院で使う輸血、あれって使うまではどう保存しているかって言うと
冷蔵か冷凍です。
種類によって冷蔵・冷凍を分けてるんですが今回は直接関係ないので省きます。

で、その凍ってる血液を、もちろんそのままでは使えませんから溶かします。
Mさんは新人のSさんにそれを指示しました。

血液って、液体だと思うでしょう。
でも、医学的に考えたら、あれって細胞の集まりなワケです。
赤血球、白血球、血小板という細胞が血漿という液体に浮いてるんです。
だから、輸血っていうのはある意味細胞の移植なんですね。
細心の注意が必要です。(まあ、それを言ったら「細心の注意」が必要じゃない仕事って
看護婦の仕事にはないけども。)
で、3分位してからMさん、あることに気付きました。
血液を溶かせと言ったのに、使用されているべき物品が出ていない。
MさんはSさんを呼んで聞きました。
「マップ(血液の一つです)、温めてって言ったでしょう?」
Sさんはにっこりして
「はい!言われてすぐ、温めはじめました」
Mさんは瞬間、頭にひらめきました。
それと同時に、ナースステーションの奥の看護婦控え室から、
チーン、と軽快な音が・・・!

Mさん、目の前が真っ暗になりました。
「・・・・でんしれんじ・・・」
地の底から響くようなMさんのつぶやきにも、新人Sさんはひるみません。
「はい!その方が早いと思って!」

正しい血液の溶かし方(温め方)は湯煎です。
お湯を張ったオケに輸血のパックごと浸けます。
それでもまだ冷たいかなーと言う時は、患者さんの点滴ルートにつなぐ中継点に、
専用のウォーマーをセットして、温めながら輸血をするのです。
それを、電子レンジ。
そりゃ早いでしょうよ。
湯煎でやったら温めるだけでも10分くらいはかかります。
でも、それくらい時間をかけないと細胞は変成したり壊れたりするのです。
それを、電子レンジ。

なんのための看護実習でしょう。
なんのための国家資格でしょう。
勉強したはずです。学校でも、就職してからの研修でも。
現場でも絶対教えるし、何より本人がまともに勉強して資格を取ったなら、
血液を電子レンジにかけるなんて、とうてい考えるはずがありません。

でもこれは本当にあった話です。
故意に人を殺した看護婦が最近ニュースで取り上げられてました。
だから言うワケじゃありませんよ。念のため。

看護婦だからという理由で、人を信じてはなりません。

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