BookReview 第2回
梨木香歩
「エンジェル エンジェル エンジェル」
親に自分の本当の姿を知らしめるなんて、それに払われるエネルギーの膨大さを考えると |
私は児童書が好きだ。
単純明快で余計なものがない所がよい。
勤め先である書店で、よく児童書売り場をうろうろしては本を物色する。
そんな時に見つけたのが『エンジェル エンジェル エンジェル』だった。
梨木香歩の本は以前『からくりからくさ』を読んだことがあった。
まだ新刊のフロアにいた頃、装幀が気に入って買ったのだった。
『エンジェル〜』の主人公は二人。
(恐らく)高校生のコウコとその祖母さわこ。
情緒不安定なコウコが、半分ボケたような祖母と、熱帯魚を飼い始めることをきっかけに、
不思議な交流を始める物語。
これを読むとまだ親元にいた頃を思い出す。
普通に生きて普通に生活していて、何のトラブルもなく平穏で、親からは十分に愛されている。
それでもどこかで不満を抱かずにいられない自分がとても浅ましくて辛かった。
それ以上を望むのはわがままで、身の程知らずなことと分かっているからこそ苦しかった。
親は私を愛し、大事にしてくれて、私も、うるさく思いながらも親のことは好きだった。
でも理解はしあえなかったのだ。
違う人間であることを認められなかったんだと思う。
近い人間だからこそ許せないことばかりだった。
分かってもらえないことがとても辛くて、どうして親のくせに、と苦しかった。
離れて初めて、親と自分は違う人間なのだとわかった。
違う人間同士が努力もなしに分かり合えると思う方が無茶だったのだと知った。
さげすんだり卑屈になったりしたわけではない。
お互いが別個の存在であることに初めて思い至ったのだ。
それまで、親も1人の人間であるということを、頭では分かっていても本当に理解しているわけではなかった。
そのこと自体に、初めて、気付いた。
許したかったのだ。そして許されたかった。いろんなことを。
息ができない程、涙がこぼれる程、苦しかった毎日。
生きて行くには犠牲が必要だ。
残酷に思えても、それは当たり前のことだと、うなずいてくれる。
この本はそう言う本だ。